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読影から障害部位を特定し、そこから考えられる神経症状を予測する。

能画像読影レポート「読影から障害部位を特定し、そこから考えられる神経症状を予測する。   

患者:M 76歳 診断名:右MCA閉塞症、右脳梗塞、高血圧

CT 側脳室体レベル  11日/14日

 

左基底核の尾状核体部前方に低吸収域を認める。日差はほとんど認められず、また入院前、右側神経症状の訴えは無かったことより、陳旧性の脳梗塞と考えられる。尾状核障害はまとめて後述する。

MRA(MR血管造影) 12日/16日

 

右MCAの狭窄により末梢の血行不良が起こり、血管造影範囲が狭くなっているのが認められる。灌流領域が減少することで脳梗塞が進行していることが考えられる。

MR DWI(拡散強調画像) 11日/16日

11:半卵円中心   側脳室体   大脳基底核・視床   16日:半卵円中心  側脳室体  大脳基底核・視床  橋中部

中心溝

 

帯状溝辺縁枝

 

 

11日:右前頭葉の中前頭回と上前頭回の境界部の皮質下に高信号の梗塞巣が認められる。

16日:半卵円中心レベルでは右頭頂葉(下頭頂小葉「縁上回、角回」~上頭頂小葉「体性感覚野」)に梗塞巣が認められる。また右中心前回外側にも梗塞巣が認められる。側脳室体レベルでは右尾状核体部、上後頭回皮質下に梗塞巣が認められる。大脳基底核・視床レベルでは第三脳室右外側にある視床の外側から内包後脚、被殻あたりにかけて梗塞巣が認められる。橋中部レベルでは右側頭葉の中側頭回を中心に大きな梗塞巣が認められる。全体として梗塞部位が拡大しており脳梗塞が進行していることが分かる。

以上より、半卵円中心レベルでは右頭頂葉・上頭頂小葉(体性感覚野)の侵襲により感覚情報の統合と認知が障害され、身体部位失認、構成失行、左半側空間無視、着衣失行などの症状が考えられる。また右頭頂葉・下頭頂小葉(縁上回、角回)の侵襲では感覚情報、視覚情報による物体の認識の障害により、左半側空間無視、着衣失行、構成失行、病態失認などの症状が考えられる。また右中心前回の一時運動野の侵襲により左運動麻痺、外側では体部医局在より特に顔面から上肢にかけて運動麻痺の症状が考えられる。側脳室体レベルでは、大脳基底核の侵襲(尾状核の障害では学習と記憶、特にフィードバック処理)により運動の調節が障害(大脳皮質への抑制性の働きが障害「抑制の亢進、低下」)され、随意運動の障害(無動・多動)、不随意運動の出現(安静時振戦、バリズム)、筋緊張の亢進または低下、姿勢反射障害などの症状が考えられる。上行頭回を含む皮質下の侵襲では右後頭葉の視覚野の働きが障害され、左同名性半盲、物体失認の症状が考えられる。大脳基底核・視床レベルでは右視床から内容後脚、被殻にかけて侵襲されており、視床では、嗅覚以外の感覚障害、大脳基底核、小脳などの連絡による運動制御障害などが考えられる。内包後脚では錐体路障害による左運動麻痺、大脳基底核では前述の症状が考えられる。橋中部レベルでは右側頭葉の侵襲により聴覚野、側頭連合野が障害され環境音失認、相貌失認の症状が考えられる。

MCAは一般に後頭葉以外の大脳半球外側面(側頭葉、前頭葉、頭頂葉の一部)、分枝はレンズ核線条体動脈となりレンズ核(被殻・淡蒼球)、内包膝、前脚を灌流しており、MCAが閉塞することでこれらの血管支配領域が障害される。今回は上記脳画像の読影からわかる梗塞部位による障害を考えたが、脳梗塞では時間の経過とともに梗塞巣周囲のペナンブラ領域の不可逆性壊死が進行し、梗塞範囲の拡大が考えられ上記MCA灌流領域障害による神経症状の出現が予想される。また今後は治療の過程で出血性梗塞が起こり侵襲範囲が拡大することも予想される。最後に、能画像はあくまで客観的情報の一つであり障害を予想する一助になるが、先入観にとらわれず臨床症状を評価することが大切だと考える。